インクジェット技術については、技術情報があまり公開されていないこともあり、多くの誤解された内容を耳にすることがあります。ここではその代表的なものについて述べます。

インクジェット技術5つの誤解

  • 1.インクジェットヘッドから吐出される液滴は丸い球状である
  • 2.インクジェット技術はここ最近の技術である
  • 3.インクジェット技術はすでに完成された技術である
  • 4.試作装置で液をパターニングできたので、製品化は近い
  • 5.インクジェットヘッドは非常に安価である

1.インクジェットヘッドから吐出される液滴は丸い球状である

インクジェットヘッドから吐出される液滴は丸い球状であるインクジェットヘッドのノズルから吐出される液は「液柱(えきちゅう)」としてノズルより空中に放出されます。この液柱は空中にて液自身の表面張力と空気抵抗により徐々に複数の球に分離していきます。 この際、液柱は液の先頭にある「メイン滴」と最後尾の「サテライト滴」およびその中間に形成される複数の液滴に分離します。ヘッドの駆動条件によってはノズルから1滴の球状の液を吐出させることも可能ですが、多くの場合この条件で吐出させることは不適切といえます。

2.インクジェット技術はここ最近の技術である

インクジェット技術の歴史を遡りますと、今日の原形に近いものが発案されてから既に40年以上の歴史があります。この歴史を大きく分類すると次の4期に分ける事が出来ます。

●黎明期:1800年代後半
コンティニュアス方式の基礎となる理論発表。この頃から、噴射された液滴の応用研究始まる。ピエゾセラミックスの圧電効果が発見されたのもこのころです。
●第1期:1960~1980年
大手電機機器メーカーの多くがピエゾ方式のインクジェット技術に注目し、インクジェット技術を文字の出力用途として応用すべく研究開発に着手した時代です。しかし、オンデマンド方式でこの時期に製品化までたどり着き、品質面で満足のいくものを商品化できた企業は1社もありませんでした。唯一コンティニュアス方式だけは実用化がすすみ、今日では製造年月日や賞味期限、消費期限のマーキング用途に利用されています。何社かは、ピエゾ方式に見切りをつけ、サーマルジェット方式の研究に着手しました。
●第2期:1981~2000年
第1期で、殆どのメーカーがインクジェット技術のハードルの高さを理解し、研究開発を断念した中、現在インクジェットプリンターで市場を独占している数社がその後も研究を継続しました。その結果、サーマルジェット方式は1984年頃、ピエゾ方式は1993年頃にプリンターの製品化に成功しました。その後、PCの普及に伴い2000年前後に、カラープリンター全盛期を迎えました。しかし、現在は、PCの出荷台数の伸び悩みに伴い、カラープリンターも頭打ち傾向にあります。
●第3期:2001年~
インクジェット技術が、電子デバイスを作る技術として、大きな注目を集めています。具体的な用途はカラーフィルター、有機EL、DNAチップ、金属配線などですが、その可能性はますます広がっています。しかしながら、インクジェット技術は非常に奥が深く、開発そのものが非常に困難であり、実用化までには時間のかかる用途もあります。

3.インクジェット技術はすでに完成された技術である

インクジェットヘッドから吐出される液滴は丸い球状であるPC用のカラープリンターにおいては正しいと言えます。しかし皆さんがお使いのプリンターを見てください。操作パネルやユーティリティの中にクリーニングボタンや機能があります。 これはつまり、現状のインクジェットプリンターでは、使用中に「液が吐出しなくなるノズルが発生する可能性がかなりの確率である」という意味です。この対策としてユーザーに不具合を解消してもらうために、クリーニングという機能があるわけです。一方、産業用途にインクジェット技術を応用した際に、「気が付いたら不吐出のノズルがあったので、クリーニングボタンを押しました。調べてみたら、30分前から不吐出が発生しており、この30分間に製造したパーツは全てNGです。」という訳にはいきません。つまり、インクジェット技術を用いて何らかのデバイスを量産する際に最も大切なことは、「信頼性の確保」です。産業用途にインクジェット技術を応用した際の「信頼性の確保」は、インクジェットプリンタに要求されるレベルよりはるかに高い筈です。弊社では信頼性低下に関係する100以上にも及ぶトラブルの要因を解明しています。

4.試作機でサンプルが作れたので、製品化や量産化は近い

装置化して、ヘッドに充填した液をパターニングしたらそれなりのサンプルができた、というレベルまではそれほどハードルは高くありません。実は本当のインクジェット開発のスタートはここからが本番と言っても過言ではありません。なぜなのでしょうか?インクジェット技術は複雑に絡み合う様々な要素の集合技術であり、これら各要素の部分的な最適化を行っても安定した再現性のある結果が得られないのがインクジェット技術なのです。 インクジェット技術には数多くのパラメータが存在します。多くの研究者はこの再現性の乏しい実験を行う中で、様々なパラメータをふりながら実験を進めれば進めるほどこのパラメータの海で溺れ、インクジェット技術の本質をつかめずに退場していくのです。溺れないためには、いかにこの技術の本質に早く到達できるかです。

5.インクジェットヘッドは非常に安価である

市販されているプリンターは1万円以下でも購入できます。そこに搭載されているインクジェットヘッドですから、コストは大したことはないだろう。多くの方はそう考えます。実際、市販されているプリンタに入っているヘッドは生産数量も大量ですし、量産設計段階からコストを徹底的に考慮した設計がされています。しかしそのような目的で開発されたヘッドは多くの場合、特殊な液をパターニングする工業用途には不向きです。一方、産業分野に使用されているインクジェットヘッドのコストはどうでしょうか?ヘッドメーカー、ノズル数、性能など様々な要素が絡みますが、その価格は決して安価と呼べるレベルではありません。

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